池田香代子氏のブログのコピー

CATV朝日ニュースターの「愛川欽也パックインジャーナル」は、専門性の高い出演者たちが2時間たっぷりさまざまな問題を議論する、にも拘わらず肩の凝らない番組だと思います。なかなか見ることができませんが、私にとってはチェックしたい番組のひとつです。

その「パックインジャーナル」に5月31日に出演した弁護士の升味佐江子さん(番組サイトの写真、向かっていちばん右)が、番組冒頭、辺野古新基地建設について話し出したとたん、何度も涙で絶句し、そのあと気を取り直して一気呵成にまくしたてました。いつも情熱的でありながら冷静でユーモアを忘れない升味さんを見慣れている私は、驚くとともに、思わずもらい泣きしてしまいました。以下、その部分です。再放送を録画して、聞き直しました(どなたかyoutubeにアップしてくださらないでしょうか)。

きのう、鳩山さんが辞意を表明しました。そこに至るまで情勢を突き動かしたのは、参議院選挙でも、政治と金の問題でもありません。升味さんの無念の涙、怒りの涙が代弁している、鳩山さんの登場によって火がついた私たちの、「米軍基地はいらない、どこにも、まずは辺野古にも普天間にも」という思いを、ほかならぬ鳩山さん自身が裏切ったことへの怒りだと、私は思います。


政権交代をするということに価値があるから、民主党勝ってよかったなあと思っていて、民主党にはもともと幅があっていいかげんな人も多いからどうなるかなと不安をもっていたらやっぱりそうなっちゃったと思っているんですけど、私は理屈は別として、ずっと東京で生まれ育った人間として(絶句)、沖縄にたいしては非常に(絶句)、いろんな意味で申し訳ない(絶句)、できることがあるわけじゃないけれども、なんとかしなきゃいけないと思ってたんです(やっとという感じで一気にここまで)。

それを、なんとかしようとしてくれる、できるかどうかは別ですよ、沖縄の立場で初めて日本を代表してアメリカと話をしてくれる総理大臣になってくれると思ってたんです(声は依然ふるえている)。できないかも知れないけど、たとえば沖縄戦の時の白旗の少女の写真を持ってでも、あるいは1995年の少女暴行事件の時のアメリカのジャーナリストのレポートがあるんです、法廷の。通訳が、暴行された少女について、失神して倒れている少女にたいして、米兵3人がどんな卑猥な冗談を言ったか、翻訳できなくって泣き崩れたっていう、そういうレポートがあるぐらい。そういう状態なわけよね。他国の軍隊が、平和なところと近接して存在していて、そこに来る兵隊さんたちは戦場に行って帰ってきてて、だからぜんぜん価値観の違う状態で行き来している、そういう軍隊が同じ都市の中にあって、しかもそれが支配的に存在しているってことがどういうことかっていうことが、きっとわかってくれる人じゃないかなと思ってたんです。だから、そのことについてものすごく失望している。

これがたとえ今この結論になったとしても、政権ができた時に、岡田さんと一緒に、この件はなんとかしなきゃいけないから、どうなるかわからないけれども、とにかくアメリカと話をしたいと、沖縄の占領の歴史のところから、あの占領の状態の中で、でも日本に帰りたいと言ってあれだけの復帰運動をしてくれた県民にたいしてね、その代表者としてこういうふうにしてほしいということを、なぜ言ってくれなかったのか。何度もワシントンに行ったり、クリントンさんが来た時にもそれこそ膝詰めで話をし、けっこう鳩山さんて目が潤んだりする人だけど、目が潤んででも話をしてくれてね、その結果やっぱり今の情勢だとこういうふうにしなきゃいけないんだと、それをひとつのステップとして、まあかれもちょっとは言ってるけども、出発点として話を始めるっていうようなことで今こうなっているんだったら、まだいいと。なんにもないじゃないですか。

この政権になってから、1人でしゃべってあれですけど、鳩山さんと岡田さんは最初の頃わりと一所懸命かなっていう印象もあったけど、他方で北澤さんとか平野さんとか、わりとしらーっとした印象が、わたしはテレビを見ているだけですけど、あった。なんでそれをまとめきれないのか。国家戦略を考える会議はいったい何をしていたのか。非常に怒ってるんだけど。怒ってどうしていいかわからない」


4分近く。この番組でこんなに長い発言に接したのは初めてです。いつも誰もがどんどん口を挟むからです。川村晃司さんも愛川欽也さんも田岡俊次さんも、珍しくじっと聞き入っていました。吉岡忍さんの、「自民党政権アメリカの代理人だった、それでは回らなくなったので交代した民主党アメリカの代理人なのか、私たちにはオルタナティヴがないのかということが、私たちの失望だ」という沈痛な発言に、私もあやうく失望するところでした。

いえいえ、失望している暇も理由もありません。辺野古に基地はつくれないし、普天間は即時封鎖、これしか出口はないのですから。吉岡さんも言っていました。「福島さんの罷免はよかった。かろうじてあそこにオルタナティヴがある、もう一つの選択肢があるかも知れないという希望をつなぐことができる」と。

きのう、イスラエルという国家は一線を越えてしまっている、と書きました(こちら)。けれど、升味さんの涙に、考えてしまいました。日本という国家も、とっくに越えてはならない一線を越えていたのではないか、それが常態となって、空気のように意識されなくなって久しかったのではないか、と。ある地域に暮らしているというただそれだけのことで、その人びとは集団で人権を剥奪されている、その他の地域の人びとの「安全」を保証するために、ということならば。私も、升味さんと同じ東京生まれ東京育ちですので、陰惨な気持ちになります。

国防や安全保障を説きたがる人びとは、国民の命と財産を守ることは国家の至上の任務だ、と言います。そのための米軍基地なのだ、と。百歩も千歩も譲って(譲るつもりはさらさらありませんが)そうだとしても、その米軍基地が人びとの命や財産を、尊厳を蹂躙しているという事実を、私たちはどう考えたらいいのでしょう。どう考えたらもなにもありません。この現実は、即座に否定するしかありません。見て見ぬふりしていていいわけがないという思いを、鳩山さんが立てた波風が、全国津浦々に運んでくれました。やっぱり、失望している暇も理由もない、私はそう思います。
以上。
池田香代子氏のことは、沖縄で平和に関する講演会を聞いてすっかり魅了された。
最近、沖縄が駒とされて政治情勢が動いていることは誰の目にも明らかで、みんながいえ、かなりの人が沖縄を考えるようになったようだ。