さすが井上ひさし作

作家井上ひさし氏のことはトーク番組で話されているのを聞いて、とても興味を持って感動したけど、本を読むのはちょっとつらい。
長くていったい何にこだわっているのか・・難しいと感じてきた。
だから、だれかの解釈の元、演劇で観ることがなんとも楽しい。
今回ふと、テレビで観劇出来て、久しぶりに感動だった。
「雨」。実はこの題名は初めて聞いた。35年も前の作品だったのに。
けれど、井上ひさし作、栗山民也演出、永作博美、市川亀次郎出演なら期待は大きい。
何と言う感激ものの劇だろう!
感激と言うことをなかなか感じなくなっているこの頃、いいものに出会った感動もうれしい。
これはまず舞台の設定がいい。
リズムを奏でる舞台袖の打楽器もすばらしいけど、
雨をイメージする鋭い直線が舞台上にしつらえてあり、真っ赤とオレンジの広ーい紅花畑が夢のように広がっている・・。
亀次郎ふんする金物拾いの浮浪者徳。
「行方不明の旦那様」にうり二つと、紅花問屋の当主にまつり上げられた。
莫大な財産と美貌の新妻を目のあたりにして、本物の当主になりおおすべく、欲をかいて必死のお芝居の始まり。
東北弁もマスターし、邪魔者は消して、大願成就と思いきや……。すべて仕組まれた落とし穴だったのだ。
根なし草の主人公を襲うどんでん返しの運命は・・。
この舞台の中、「橋の上」と「橋の下」と言う言葉がポイント、つまり権力者と民衆の話、井上ひさし氏の哲学そのものである。
お上の命令に逆らうことの出来ない民衆は、一人の浮浪者(スケープゴード)の命を差し出して、民衆のために紅花畑を守った。
「群れて個を殺す」ことを日本人はやって来た、今も。
小沢一郎氏が「政権交代のスケープゴード(いけにえ)にされた」ことは現に生々しく気掛かりなことです。
井上ひさし氏のメッセージはせつない。