「帰れないヨッパライたちへ」

この本はきたやまおさむ精神科医師の著書である。
沖縄での講演会のテキストなのでちょっと真面目に読んでみた。
もちろん若き日にザ・フォーク・クルセダーズのミュージシャンとして作詞した「帰って来たヨッパライ」をもじったものだろう。
サブタイトル生きるための深層心理学
講演会のテーマは「三角関係」である。
裏切り、嫉妬、孤独を避けて、安全な環境と柔らかな癒しを求める私たち。
三角関係で揉(も)まれなくても自立と成長はできるのか。
ここで言う三角関係とは、自身と世間を取り持つ第三者的味方の存在の重要性を言っているのであって、一組の男女の間に問題を起こす人間のことでは全くないと言うことである(^_^;)。
人は社会に出ていくことで幾多のつらい経験を強いられ、それを乗り越えて強くなる。
その手助けをする第三者には家族があり、近年、相談者(カウンセラーなど)の存在が必要とされている。と。
追伸、北山氏はイギリスに留学中に学んだフロイト心理学がヨーロッパの昔話にその元を示したのに対し、日本の昔話にもその深層心理が示されているとしている。
「鶴の恩返し」では、姿を見てはならないと言って機を織り、欲に目がくらんだ夫の求めに応じて二枚目を織って身を滅ぼした。
蛇女房も、片目を売ったはいいがもう一つを請われるままに差出、盲目となって身を滅ぼした。
身を滅ぼす前に断れなかったのか、自立心を持てなかった恩返しのための動物妻の物語は深読みが出来るようだ。