姜尚中(カン・サンジュン)著の小説「心」

ひところ、姜尚中氏は息子さんを自殺で亡くしたのではないかと言う話でにぎわっていた。うつ病でかなりの薬を服用しなければならなかったとも言う。
病気であればいかんともしがたいことであっただろう。
親としても乗り越えるほかない。
いずれにしろ子供を亡くした親の悲しみはいくばかりであろう。
そのことでテレビ対談をやっていた。そこから「心」と言う作品が生まれたという。
早速読んでみた。
小説では、ある大学生が親友を亡くした喪失感をどう考えるか、と言う設定で若者と先生との往復書簡の形で進められている。
姜尚中さんが生前の息子さんとどれほど会話されたのか分からないけど、むしろ実の親子には心の底を覗きあうことはないだろうし。
今更ながら息子さんのこころをくみ取りたい一心で書き上げたのではなかろうか。
さて、息子さんからの最後の言葉が「末永く、お元気で」だったことが印象的だった。
ほんとに、残された者は命が尽きるまで元気に生きて、先に死んだ人への
思いを胸に抱いてあげるほかない。
思えば、私も両親をいつも心に抱いているなーと感じながら生きている。
生前親孝行したかどうか自信ないからだけど、死んで時間がたつほどはっきり感じるようになっている。
だからかもしれないけど、お墓や仏壇には興味がない。気持ちの中にずっしりと居るから。
と、つい自分に引き寄せて「心」を読んだのだけど。
たとえば砂時計、上部は未来で、狭い現在を通過しながら、確実に過去が溜まっていく。
過去は消しようがなく、いつも有る。
誰かの心に残りながら、もしくは多くは残らずとも、人類は生をつなげて生き続けるんだろう。
大切な死を悲しむことより、大切な過去も現実もを抱く「懐の大きさ」が、より生を豊かにするんじゃないんだろうか、なーんて自分で言ってることがわかっているのかどうかも定かではないけど。以上。
話は飛ぶけど、言えることは、歳を取ってやっと解ったことが多くて、歳を取るって必要だなー。
なんて、負け惜しみのようなことを言い合いながらお茶を飲み、奮い立っているシルバー組であることよ。